スタイルの確立 ～名曲の誕生～

二年近く通った歌唱教室を８月一杯で辞めることにした。お世話になった先生には申し訳ないが、自分の歌唱力の限界が見えてしまったのだ。もちろん、この２年間に習得したものは言葉にならないほど大きい。音痴矯正コースを受講していたので、音感が見違えるほどしっかりした。これは曲作りにおいても非常に大きな利点となっている。
もし、そのへんの人とカラオケに行ったら、大抵の人を感動させるだけの自信はある。女の子とカラオケなんかに行った日には、１２０％で惚れさせる自信はある。ただ、プロの世界でやっていくには、自分の歌唱力では厳しい気がしてきた。

じゃ、私に何ができるのか‥考えた、　‥ひたすら考えたよ。


ひとつの方向性が見えた。自分の目指すべきスタイルの方向性が‥
私はかつて京都にいた頃、よく「和製ルー・リード」と揶揄されたほど、‘語り口調‘で歌うスタイルに定評があった。音程など気にせず、魂の言葉を吐き捨てるように歌うスタイルだ。ここ数年は黒人HIPHOPをよく聴いてきた。HIPHOPも音程なんて関係ない。小さい頃、ピアノを習ってなくてもできる。そして、メチャクチャかっこいい。英語詞なんで、意味はあまりわからないが、言葉の響きがとにかく心地良いい。生きる活力に満ちている。
自分は日本人なんで、それらと同じようなことはできないが、‘語り口調‘‘、ラップ‘を自分なりに突き詰めたスタイルを目指そうと思うのだ。


早速、新曲を作ってみた。
自分至上、最高の曲がいきなり出来たので、その過程を記録しておこう。




７月２０日（月、祝）

昼間、栄をブラブラしていた。給料日前で、金はないし、携帯まで停められていた。この日、名古屋港で花火大会があるらしく、何人かの浴衣美女とすれ違った。とてつもない、うらやましさがこみ上げてきた。

夕方、田んぼのあぜ道に車を停め、車内で一人、ボロボロとギターを弾いていた。もう、普通のメロディの曲を作るのはやめようと思っていた。しかし、そんな思いとは裏腹に、心を締め付けられるようなメロディが次々に浮かんできた。Ａメロ‥Ｂメロ‥Ｃメロ‥と、気付けばとんでもない名曲の骨格が出来上がっていた。この曲を、もし今度のハポンで演ろうものなら、‘完全に売れ線に寝返ったな‘と思われるんじゃないかと心配するほどのキャッチーなメロディだった。それでも、この曲をとことん突き詰めてみようと思った。
家に帰り、サビの部分を更に煮詰めて、録音をした。



７月２１日（火）

深夜、酔いがいい感じに回ってきた所で、昨日の曲の歌詞を考え始めた。
曲そのものは、とてつもなくメロディアスな曲だが、ここに、語り口調の言葉を押し込んでみようと思った。そして、ラップのように韻も踏ませてみようと思った。
密かに恋心を寄せている某レコ屋の子を想いながら詩を書いた。
すべてを書き終えた後、これはヤバイと思った。‘ここまですごい曲は今までなかった‥とんでもない曲を作ってしまった‥‘興奮を抑えるのに必死だった。録音をすませ、最高の満足感で眠りについた。



７月２２日（水）

連日連夜の一人酒で完全に腹がくだっていた。この日は禁酒をすることにした。
冷静な視線で、昨日録音したものを聴いてみた。一瞬で赤面し、耳から火を噴出しそうになった。おもいっきり恥ずかしい言葉のオンパレードだった。これはとても人に聴かせられないと思った。ラブソングもろくに書けない自分が情けなくなった。テーマを‘ドリーム‘に変え、一から書き直した。若干、当初の詩も取り入れ、聴き方によってはラブソングにも聴こえるような作品が仕上がった。

歌いだしはこうだ
「つき合ってくれよ今夜ぐらい、つれない女ばかりでつらい～」
「ぐらい」と「つらい」を掛けている。

この曲を今度（８／２６）のハポン（ＫＤ　ＪＡＰＯＮ）で演ろうと思う。